十三式大回転

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zoom RSS ギルガメッシュルート(6)

<<   作成日時 : 2006/03/04 22:53   >>

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この結果は解っていた。

前回の聖杯戦争を模したというのなら。

この立ち位置で。



英雄王は己に降りかかる泥に身を焼かれた。



これを、再現せぬ筈が無い。







「やあ」

金色の髪を持った子供は微笑んだ。

「また、飲まれてしまったんだね。折角、腕を犠牲にしてまで生き残ったのに」

周囲は黒一色に塗りつぶされた空間。何故か身体が動かない。問うべき口も動かない。

「ああ」少年はぽん、と手を叩いた。「身体は動かないよ、だって此処はサーヴァントは存在できない空間だからね。本来だったら、如何なるサーヴァントも此処には存在できないんだ。此処は座への通り道。存在出来るのは究極の半端モノだけ。英霊は此処で情報に変換されて、知識だけを座に届けられる」

ざ、と少年の像がずれる。次の瞬間には青い槍兵が其処に居た。

「不思議だと思わねえか。何故、情報だけが届けられるのか」

くるくると手慰みのように赤い槍を回した。

「それは人間性が変わっちまうからだ。どんな存在にも永遠というのは有り得ねぇ。俺等は経験の分だけ変わってしまう。それは少なくとも俺等を使うモノにとっちゃ歓迎したくないことなんだろうよ」

槍兵の像がずれる。裏切りの魔女が其処に立った。

「望まれるのは私達の全盛期。最も強く、最も迷いのなかった時。私達は多くの記憶を教訓として知っている。でも、根源は何も変わりはしない」

像がずれる。赤い弓兵。

「私は掴み切れぬ正義の為に英雄となる事を誓った。世界とやらに使われる事を望んだ。私は世界に使役される中で精神を磨耗し、やがて最初の最も強かった己を忘れた。だが」

黒一色だった世界に、映像が浮かぶ。赤い弓兵と一人の少年の戦いの場面。弓兵は敗北し、少年は勝利した。弓兵は僅かにその映像を見て笑う。

「そう、根源は何も変わりはしない」

像がずれる。騎士王。

「だが、根源から多くの存在が派生する。それは単純に分けて善性、悪性の二つです」

騎士王の性質が反転した。黒い甲冑。黒い剣。金色の眼。

「サーヴァントである以上、アレに飲み込まれれば私達はその性質を反転せざるを得ない。そう、自分の存在を完全に保つ事など絶対に不可能だ。それが、出来るならもうソレはサーヴァントとは呼べない」

像がずれる。アサシン。

「だが、お前は保ちえた。英雄王。第四回の聖杯戦争。お前は今とまったく同じ状況に置かれ、そして其処から肉を得て現世に帰還した。―――――お前はどんな時でも規格外だ」

像がずれる。ギリシャの大英雄。肩に白い聖杯。

「そう、本来なら有り得ない。だって、それはルールだから。貴方がやった事は魚が空を飛ぶような事。汚染されない筈ないのに、逆にそれを飲み干してしまった」

白い聖杯は笑った。

「私達、魔術師の研鑽を。魔術師が絶対と信じてそう造ったルールを、貴方は簡単に破ってしまった」

像がぶれる。漆黒の風景に溶け込むような、神父服。言峰綺礼がそこにいた。

「―――――だが、今回はそうはいかない。そうだろう、ギルガメッシュ。第四回の時は貴様の肉体は欠けていなかった。魔力もまだ潤沢にあった」

神父は笑った。底のような笑みだった。暗く見えない狭間の底のような笑み。

「繰り返し言おう。だが、今回はそうはいかない。お前に最早、這い上がる力など残っていないのだから」



そうだ。

その通りだ。

魔力は底をつき、今や肉体すら此処には無い。

暗い闇に飲まれ、座に帰るだけ。

此処で、死んでも。それは死ではない。座に戻るだけだ。この経験を知識として蓄えて更に己を積み上げればよい。そう、此処で諦めてしまっても、再び目を開けた時にはこの時より優れた自分だ。きっと、対処できる。この状況に再び陥れば対処できる。

今は、無理でも。次にはきっと。



―――――きっと?



きっと、何だと?

次こそこの状況に対処できると言うのか。

「笑わせる」

何もない空間に声が生まれた。

「笑わせてくれる」

そう、こんな意志は己の意志では無い。

「挫く気か」

この意志を。この英雄王の意志を。染め上げられた闇の中でも輝きを失わないモノを知っているか、それは目の前にある。目を開け、目を開け、目を見開け。瞳に映るのは言峰綺礼。自分のマスター。己が殺したマスター。笑った。そんな姿を真似ている次点で既に底が知れている。そう、奴は語った。根源は変わらないと。だが、どうだ。先程現れたサーヴァントは皆、上辺だけだった。その根源までは真似できていない。姿形を真似しても、そこに真に迫るものがない。贋作は何処までも言っても贋作。真作の輝きの前には屑でしかない。存在しないはずの腕を上げた。



「そうか、貴様が欠けた肉体を補強する為に塗りこんだ魂―――――」

なんて、皮肉。呟く言峰綺礼。否、今や彼の像すら保っていない。其処にあるのは人間の形をした影だ。影は「ハ」と笑った。

「殺した存在に、守られて生きているなんて」

当然。当然だ。王とはそういう物なのだから。人間であって人間でない。人間であっては王では無い。屍の上で平気で笑う。殺すべき者を殺し、従う者を生かす。恨みなど聞こえない。助けを求める手すら踏みにじろう。非道と叫ぶ人間はその程度だ。

恨み事を言う前に、己の意志のままに叫べ。

助けを求める手を握り締めろ。拳こそ己が戦うという意思表示。



英雄王は、そういった人間を良しとする王である。



屍が賛美する。踏みにじられた死体が、彼に熱狂する。

味方も敵も神すらも英雄王から目を逸らせない。

なぜなら、それは誰もが一度は憧れた完璧の形だからだ。

何も諦めない。欲するままに総てを手に入れる。不可能なんて無い。神ですら彼の前では単なる観客に過ぎない。

一切の妥協を許さず、只管に英雄。

ほんの少しの困惑も見せず、残酷なまでに王。

「有り得ねぇよ」

影―――――アンリ・マユが吐き捨てるように言った。

「どういう精神してんだ」

“這い上がれぬ筈の闇”の中で。

「どうしてそうも」

アンリ・マユはギルガメッシュを真似ようとして、失敗した。皮すら被れない。

悪夢でも見るかのように、闇から生まれ出る英雄王を見る。

アンリ・マユの肖像はブレて形が定まらない。

「格好良いんだよ、アンタ」



未だ形の定まらぬ姿で、英雄王は笑い声を上げた。

手を伸ばす。何かを求めるように伸ばされた左腕。失った筈の腕。

それをゆっくりと握り締めた―――――。







―――――果たしてそれは造られた友情だっただろうか。

いや、例えそうだとしても。



構いはしない。



終生の友を得た。王座で一人。黒く心が塗りつぶされていく中、そこに後悔なんて憶えることが出来なかった中で。

つらいだろう、と言ってくれる者がいた。

人は完璧じゃない。完璧を装う事は出来る。それでも完璧じゃない。何処かに逃げ場を求める。本人に自覚はなくとも、きっと自分以外の誰かに自分を知って欲しいと願ってしまう。それは、弱さだ。唾棄すべき弱さ。狂おしい程の弱さ。

この世に同種はいない。同族はいない。王と女神から産まれた世界で最初の英雄は王座で唯一人だった。誰も何者も求めなかった。幼き時、笑いながら誰も彼も利用してやれると言っていた。だが、永遠に固定される自分なんて存在できなかった。

信じていた。人間の残酷さ。人間の優しさ。総てを許容して信じていた。

だけど。



人間がこの程度だったなんて、知らなかった。



その所為で、人間に価値を求められなくなった。変わらぬ存在を求めた。見れば賛美したくなる財宝を求めた。そしてありとあらゆる贅を尽くし、総てを手に入れた後で。

じゃあ、此処からは?

その問いが来た時。不意に総てが詰まらなく見えた。

人を征服したことも。

大地を総て手に入れた事も。

財を総てその手に入れた事も。

輝いていた世界が急激に色褪せていった。



だが、神というのは如何やら、余程に英雄王が鬱陶しかったらしい。



希望を与えてくれた。その名前はエンキドゥ。初めて見た時思った。泥から作られた彼を見た時思った。知性を持った彼を見た時思った。



―――――きっと、コレは自分を絶望させるだろう。



頭を掻き毟りたくなる衝動。あれは。あれは。無意識に涙が流れてきた。己の身は半神。自分に与えられる筈だった残りの人間性と神性。あれは、それらを持っている―――――



―――――己の半身だ。



会いたかった。ずっと、会いたかった。欠けていた己の中の感情。色褪せていく世界の中の最高の希望。出会えなかった筈の可能性。正しく神の悪戯。笑いかけた。笑いかけられた。供に居よう、友になろう。永遠の時、裏切れぬ友になろう。



世界に問う。この友情は偽りか。神に作られた仮初か。



「違う」



そう違う。掴み返された手の熱。奴が死んだ時の絶望は、己の抱いていた希望の裏返し。

だから、後悔なんて無い。死への渇望を抱くほどに、抱いた希望は大きかった。



自分はどうやって生きてきたか、それを思い出せば後は簡単だった。己の感情すら踏み越える。後悔も絶望も総て彩りだ。忘れえぬ友情への手向けである。あれは自分だった。半身として作られた、裏切れぬ最初にして最後の友よ。餞別だ。泣きはしない。もう、涙は無い。だから笑った。笑い飛ばした。殺せるものなら殺してみろ、死よ。



我はそれすらも踏み越えて行くぞ。







―――――握り締めた。



「そうだ―――――!」

掴んだ先に、英雄王の最強剣。エアがある。

最後に見た欠けた夢、そこで再度総てを手に入れた。

「―――――何時だってそうやって来た!」

四肢に力を込めて、勢い良く跳ね上がるようにして立ち上がった。

空いている腕を振るい、無数の宝具を召還する。

向ける視線は天井へ。崩壊する洞窟。何時瓦礫に潰されても可笑しくなかった。

衛宮士郎によって、聖杯は破壊された。残りは崩壊のみ。

「―――――何もかも踏み越えて来た!」

天井には、縦横無尽に鎖が張り巡らされていた。自分が蔵から出した訳では無い。そう、友とは―――――手を差し伸べるのを躊躇わない存在を言う。

エルキドゥが悲鳴を上げる。瓦礫に神性も何も無い。唯の鎖が、落ちようとする岩石を総て押しとどめていた。

宝具が踊り飛ぶ。鎖が千切れる。英雄王は笑った。

「負かせるものか、我の強さを―――――!」

投擲された宝具が岩盤を砕いていく。エアが唸り声を上げた。

砕き損なった、岩石。己に降り注ぐソレに英雄王は何ら、手を打たない。

「―――――超えられるものか、我の高さを!」

魔力切れ―――――? 違う。この内から湧き上がる熱に、限りなど無い。

ただ、手を打つ必要が無いだけ。梅雨払いなど王の仕事では無い。



「―――――づあああああああアアッツ!!!!」



眼前に広がる、一欠けらの花弁。衛宮士郎が英雄王に降り注ぐ万難を廃す。

「世界も神も―――――ましてやサーヴァント!」

ぶおん、とエアが振られた。巻き起こる暴風。世界最強が此処にあった。

「どれも、我の敵には成り得ん!」

びしり、と花弁に罅が入る。そのまま砕け散った。崩れ落ちる衛宮士郎。だが、顔には笑みをたたえている。それは何故か。―――――問うまでも無い。

「何もかも我が踏み台! 我が添え物よ!」

叫び声と供に、放たれる宝具。

「―――――天地乖離す」

証明である。

最強の証明である。

天と地を割った剣。世界を総て平らげた王。その最強の証明である。

エクスカリバー。人が生んだ最強にして最高の幻想。強く在るべし、と名付けられた剣。

だが、それも。

それすらも。

「―――――開闢の星ッツ!!!」



この一撃の前には、―――――敵わない。



岩盤を砕いていた、総ての宝具が弾き飛ばされる。

完全に千切れとんだ鎖が周囲に銀の雨を降らせた。



天地を割る一撃が、空を砕いていく。

「何もかも、誰も彼も、総て踏み越えていくぞ」

抗いたければ、抗え。殺してやる。

誰も彼も誰も彼も誰も彼も。

前には行かせない。



覗いた朝日。

僅かに見えた天を見上げる。

英雄王はぐらりと空を見上げたまま、倒れこんだ。









結論から言えば、今回の騒動は無駄に騒ぎが大きくなった。

派手好きの馬鹿が、見事に柳洞寺の洞窟を崩壊させてくれたお陰で派手に私の事後処理が増えた。そのことに文句を言ったら、奴は言った。幸運と思え、我の始末を任せるのだ。

殴ったら殺される事が解っていたので、視線で不満を顕にした鼻で笑われたが何もしないよりはマシだ。そう思いたい。

うん、でも。幸運と言ったら幸運だったのだろう。

遠坂凛は自分の首を撫でた。首にはチョーカーが巻かれていて、首についた傷痕を見せぬようにしている。

私は生き残った。運命の悪戯なんかじゃなく、不完全な魔法で。

王様に言わせれば、セイバーの剣で切られたのが良かったと言っていた。他の者、他の剣なら繋がらなかっただろう、と。そこまで見事な太刀筋だったのだ。体中に空いた穴は見事に塞がった。失われた肉が何で補われているかは余り考えたくない。

ただ、助けてもらったという事を知っている。



―――――少しの幸せをあげる。凛の魂はまだ此処にあるから―――――



有り難い事だと思った。他人を救うぐらいなら、自分を救いなさいと叱ってやりたくもある。今回の聖杯戦争でも失ったモノは数知れない。何もかもが滅茶苦茶だった。誰も彼も己の分を弁えていれば良いのに、誰も止まっていなかった。否、止まっていられなかった。後悔を無くそうと思ったら、多くの荷物を振り落とさなければならなかった。



―――――衛宮士郎は魔術師では無くなった。

彼の魔力回路は完全に焼ききれて二度と戻らない。彼はこれから一般人として生きていかねばならない。

「まあ、適当でしょうけどね」

彼は間桐桜と一緒に、冬木の町から出て行くそうだ。少なくとも桜が落ち着くまで、罪の意識が多少なりとも和らいでくれれば良い。自分もそう願った。衛宮士郎の言葉を思い出す。救える人間は限られている、と。遠坂凛は自分が甘いという事を自覚しているが、顔の知らない誰かより、自分の妹が生きていてくれる方が嬉しい。誰にも非難されそうな思いだ、だから口には出さない本人にも言わない。生きていてくれる、その事だけに感謝した。



もしかしたら、二度と会わないのかもしれないけれど。



間桐が完全に潰れて、アインツベルンも聖杯の消滅により冬木の地から手を退いた。完全に日本で指折りの霊地、冬木は遠坂の管理下に置かれることになった。教会にも新しい人間が回されてくるそうだが、未だ来ていない。



紅茶を啜った。あまりおいしくなかった。皮肉屋のサーヴァントを思い出す。

ああ、何だろう。どうして私は生き残ってしまったのだろう。生きていて嬉しいとは思うけど、生きていて良いのかという思いもある。

「本当に、難儀だわ」

自分の性格も、自分の置かれている状況も。



凛は唸った。結界の所為で敷地内に誰か入って来たのを知る。



こんこん、と扉が鳴った。



澄んだ声で、来客を告げる。

教会の人間だろう。外に放ってある使い魔がカソックを着ていた姿を見ていた。

まだまだ、難儀な状況は終わらない。

凛は溜息をついた。

幸せであるという事は、多分、間桐桜にとって痛みを伴う事だ。

開けた扉の先には白い髪。

凛は彼女の容姿には気を向けない。自らの内で思考の続きを呟いた。

でも痛みを受けなければ、幸せを手に入れてはいけない。

あの子は奪ったのだから、誰かが当たり前に手に入れていた筈の幸せを。



だから、幸せな日々はあの子を焼き尽くすだろう。



でも信じている。ぼろぼろになって、誰にも眼を向けられない程に彼女が傷付いても。

見捨てる事を考えない馬鹿を知っている。



微笑みを浮かべた。自然に漏れた笑み。それは己の内に向けられた物だが、来訪者にも向けられている。



決めた事は。

何時だってあの皮肉屋に恥じないように生きること。

何時だって助けてくれた白い少女に恥じないように生きること。

何時か何処かで幸せにやっている馬鹿と妹に胸を張れるように。



「ようこそ、冬木へ」



生きること。







衛宮士郎は縁側に一人で座っていた。

もうそろそろこの家を出なければならない。

間桐桜をこの街に置いておくという選択肢は衛宮士郎には選べなかった。

彼女は必死で自分を取り繕っているが、夜は何時も泣いている。飛び起きる時は叫びながら起きる。そして中空に謝罪する。頭を掻き毟って。自分の罪が許されないものだと知っていて、只管に謝る。

この世で完全に桜の味方を出来るのは、ライダーと自分だけだ。

二人もいた事を喜ぶのか。

二人しかいなかった事に悲しむのか。

自分は、喜びたいと思う。今まで桜には誰もいなかったから。

手を握る。魔力はもう無い。魔術回路は完全に焼ききれた。かなりの記憶も失っている。『藤ねえ』と憶えていて『藤村大河』を覚えていなかった。彼女には泣かれた。

あれだけ、自分を支えてくれた父親の記憶も殆ど残っていない。

『安心した―――――』

その呟きだけは憶えている事に感謝した。

多分、忘れてはいけない事だったと思うから。



「先輩」

無理をして笑う彼女に微笑み返す。

立ち上がった。荷物を手に引っ掛けて、記憶にある一生を過ごしてきた家にさようならを告げる。玄関に立つ二人に向かって歩きだした。

此処に帰ってくる時は。

桜の前に立った。手をそっと握る。僅かに微笑んだ。

ライダーが此方を見て優しい笑みを浮かべるのが見えた。

―――――彼女の笑みが、嘘じゃなくなったら。



きっと、帰ってくる。







崩れた洞窟の前。

ギルガメッシュは何をする訳でもなく、空を見上げていた。

空は何処の世界でも変わらないというが、それは違うと思った。

嘗て見上げた空はこんなに狭くなかった。人が増えたのだろう。

鬱陶しいことだ、と英雄王は思った。

不意に思った。旅に出ようか。小うるさい言峰綺礼はもう居ない。令呪で縛られる危険さえなければ、此処に留まっている意味も無い。聖杯が破壊されたので、セイバーとの再開もないだろう。悲しいことだ。ふと、己の半身との再会を望んでいた自分に気付く。馬鹿なことだ。



死というのは唯の一度であるから、死なのだ。

自分の親友の死を冒涜する趣味はギルガメッシュには無い。



ギルガメッシュは周囲を見回した。探し物は直に見つかった。

アサシンの短刀が、一本だけ地面に突き立っていた。

「どういう事なのだろうな」

誰かが突き立てたと考えるのが普通だが、アサシンがやったと思った方が楽しい。

墓標の刃を一撫でした。一瞬、蔵に放り込んでしまうかという思いが湧くが、それを否定した。これは、此処にあるから価値があるのだ。自分が動かしてしまえば、それは価値をなくすだろう。

ギルガメッシュは僅かに唇を歪めた。随分と感傷的になっている。踵を返した。



再度、空を見上げる。矢張り空は狭かった。



広い空を見に行こうか。いや、行こう決めた。

気が向いたら、この世界を再度手にいれてやっても良い。

ギルガメッシュは笑い声を上げた。何故か、楽しかった。世の中が退屈じゃない事に感謝した。衛宮士郎や遠坂凛のような人間が生まれてくる世界ならきっと退屈はしない。



「少しは楽しませろ、世界」



最古の英雄王が、新しい伝説を造りに行く。



















Fate/stay night

ギルガメッシュルート。















完。























遠い昔の話。

誰にも知られぬ程の昔。

誰よりも強い王は、誰よりも信じていた友を亡くしてしまいました。

誰よりも愛した友は、体を残して死にませんでした。彼は元の土塊になってしまいました。

王は大いに悲しみます、友だった土塊を握って涙しました。

王は思います、一人ぼっちの王は思います。

己の為に造られた友は、自分の命が尽きれば誰にも覚えていてもらえないのではないかと。それは酷く悲しいことだと、王は思いました。

世界は王を知っています。人は王を知っています。神は王を知っています。

でも、友はきっと誰にも覚えていてもらえないのです。

それは一人ぼっちだった王よりも、酷い孤独でした。

王は友情を示そうと思いました。

死という今まで考えた事も無いモノに確かに恐怖を覚えました。

不死という響きは、王の心を迷わすには充分でした。



それでも、ありとあらゆる誘惑を跳ね除けて王は友情を示そうと思いました。



自分が死なずにいれば、彼は永遠に忘れられない。



―――――ですが、その誓いは到底果たされぬ物ではありませんでした。

王は、決して何物にも頼らぬ故に誰よりも強い王だったのです。

世界に遍く総てが王の手の内でした。もう手に入れるものなど何もないのです。

もう記憶の中の友以外、王に欲しいものはありませんでした。

こんな状態で生きてどうするのだ、王は問います。

笑いながら、総てを笑い飛ばしながら王は泣きました。



簡単なことだった。



忘れないなどという誓いはいらない。



王は薬を投げ捨てます。颯爽と黄金の鎧を翻して。

生きるところまで生きて、友に会いに行こう。

王は思いました。下らない世界などこちらから捨ててやる。



でも、王は己で死ぬことなど良しとしません。

友と会う唯一の方法が死だとしても、それを良しとしません。

友を殺した『死』に屈してやる心算などありませんでした。



だから、下らない世界に己を縛り付ける為に。



名前を付けました。



神を縛る鎖。半神の王を半分だけ世界に留める鎖。








――――――――――天の鎖(エルキドゥ)

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