十三式大回転

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zoom RSS 黒く、白く、赤く、青く。(7)

<<   作成日時 : 2006/03/17 00:02   >>

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嘘はいらない。
世界に嘘はいらない。
血を吸わぬ吸血鬼などいない。
血を吸うから吸血鬼だ。
吸わぬなら唯の鬼であろう。

「トラフィム………」

引き裂かれた四肢を無理矢理立ち上げた。
叫び声は、響いている。
外で? 違う。
私の胸の中で、だ。

「傷はまだ、塞がっていない」
「違うだろう」
白翼公は笑う。
「傷は塞がらない」
魔剣で傷つけられた傷は、決して。
この貧弱な吸血鬼の身では耐えられない。
「―――――思えば、長い年月だ」
踏み出す。
「何年生きたか、否。何年この世に縋り続けたか忘れてしまった」
忘れたくない記憶があり、見たい風景があった。
それを、叶える為に真祖を殺す事にした。
恨みなどない。個人的感情からは全くもって、恨んでなどいない。
ただ、邪魔だったのだ。
真祖という存在が。
ただ、只管に。

ヴァンが、白翼公の肩を掴んだ。
白翼公の体がぐらりと揺れる。
「トラフィム。犬より上等に死にたいんだろう? だったらまだだ。傷は直せないが塞ぐ事は出来る」
「塞いでどうなる? 真祖を殺せるか」
ヴァンは何も言わずに黙った。
そんなものだ、と白翼公は思った。
結局、自分は無力な個人でしかない。
ならば、どうする。最強を前に、攻撃すら効かない脆弱な化物はどうする。
トラフィム・オーテンロッゼは過去を回想した。
楽しかったことも在ったが、大筋苦労のしっ放しだった。
徒党を組んでいた奴等は殆どが和を成すという事を知らず、好き勝手に暴れまわってくれたお陰で自分が何時も後始末をしていた。
走馬灯とは違う。ただ、自分より強かった仲間を思い出した。

『自分より強い奴にあったら、とりあえず殺せ』
スタンローブは言った。
『そうすれば、俺は殺されねぇ』
彼にとってはその言葉は真実だったのだろう。
『私は逃げる。ああ、私じゃ逃げるよ。自分より強い奴あったら尻尾を巻いて逃げ出すさ』
コーバックは晴れやかに笑った。
『だって、命より大切な物なんて誇りしかないだろう。そして、その誇りは生きている限りこの私の胸の中にあるのさ』
頷ける部分はあった、だが退けぬ時が絶対来ると思った。
自分は馬鹿だから。
『ならば、抗うしかないだろう。自分より強い者など世に腐る程いる。目的を叶えようとすれば、命を懸ける場面は絶対に来る。叫べよ、吼えろよ、魔術師。頭の中に詰っているのは知恵だけではないだろう』
グランスルグは嘴を打ち鳴らした。
『それを信じ、それを信じ、それを信じろ』

知恵を追い出そう。次に臆病な心を追い出そう。
傲慢な心を追い出そう。罪の意識を追い出そう。

殺意すらも、捨ててしまおう。

残ったのは唯、前に進もうという意志だけだ。
それだけで良い。己の理想のまま我侭に罪無き真祖を殺そう。

「ヴァン、私は行くぞ。私は行く。今すぐだ」
「なんて、情熱的だ」
頭を振って、ヴァンは笑った。「君らしいじゃないか、トラフィム」
「血で服を汚し、血の味を口の中に転がし、血化粧を施して―――――ああ、何時も通りだ。無様に行こうか」
「付き合おう、馬鹿が足止めをしている」
エンハウンスが孤軍奮闘していた。真祖の攻撃をいなし、あるいは受けてその度に体を再生させながら、唯只管に時間を稼いでいる。
「立ち上がるのを待っているのか」
「そうだ、アルトルージュと君―――――そして遠野志貴。君たちが主役だ。この馬鹿らしいお祭り騒ぎの主役だ。そして馬鹿はそれを待っている」
「良い馬鹿だ。彼はそういう人間では無いと思っていた」
「嘗てはそうだった、最近までは違った、そして今はそうだ」
ヴァンは鞄の中を開けた。そこには木彫りの人形が押し込められていた。
「難解だな」
白翼公は笑った。
「僕の感傷と過去からの感想さ。理由も感じた心も誰にも話す事は無いだろう」
「ならば墓場まで持っていくと良い」

男達は肩を並べて歩き出す。

「走らないのかい?」
「貴族は何時だって見得を張るものだ。そして、今こそ見得を張る時だ」

歩く。その道を踏みしめ、歩く。

「聞かせてくれ」
ヴァンが言った。
「何故、真祖狩りを?」
「簡単な話だ。私は真祖が嫌いだった。私の理想に邪魔だったのだ」
白翼公は歩くたびに体から血をこぼし続けた。
「人と吸血鬼はきっと、手を繋げる。そんな理想の邪魔だった」
ヴァンは初めて表情を崩して白翼公を見た。
「笑うな」
「笑うさ」
良い夢だ。そうヴァンは笑った。
「そうだな。血を吸わない吸血鬼などいたら人間は僕等を相手にしてくれないだろう。僕等は血を吸うから弱いのだから」
「そうだ。血の吸わぬ吸血鬼など一人でもいてみろ、吸血鬼はそれを目指すぞ。絶対に自分を完璧にしようとするぞ。その願いが叶ってしまえば人は共存など考えてはくれまい、吸血鬼は共存など考えようともしないだろう―――――それでは駄目なのだ」
なんて、自分勝手。そう白翼公は笑った。だけど夢に見たのだ。
吸血鬼と人間が微笑み合える世界を。
夢に、見てしまったのだ。
「だったら、答えは一つだ。完璧な鬼などいてはいけない。いたことすら嘘にしてしまいたい。幸い彼女が最期の真祖だった」
「良い話だ。これで正義だ悪だなどと大義名分が出てきたらどうしようかと思っていたよ」
「だが同時に酷い話だ。私はこの理想を抱いた瞬間から、世界最大の馬鹿になった」
「馬鹿はいいものだよ」
ヴァンが腕を振るうと人形がぎこちなく立ち上がった。
「自分が走ることに理由をつけないのだから」
白翼公は何もいわない。ただ、からかうように笑った。
「随分と言葉が少ない」
「本気の時は、地を出す。言葉なんて並べるだけ嘘になるだけだろう」

彼等が走り出そうとした瞬間に、少女の声と犬の鳴き声が聞こえた。

「決めたわ」
黒い髪を靡かせて、美しい黒き姫と霊長の殺害者は御託を並べる男どもを追い抜いた。
「私はあの子を見捨てられない。だけど、この世界が無くなるのも良しとしないわ」
ヴァンとトラフィムは目を合わせた。自分達の前で仁王立ちしている黒き姫君を見る。
「私の名前を思い出しなさい、有象無象達。私の名前はアルトルージュ・ブリュンスタッド」
プライミッツは、足を止めずに真祖に向っていく。
「―――――私は何かを諦めるような立ち位置にいないわ」
「羨ましい限りだ」
トラフィムが笑った。
「では、どうする。世界の命運この一戦にありだぞアルトルージュ・ブリュンスタッド殿」
「舐めるな。トラフィム・オーテンロッゼ」
めきり、と骨格が歪む音がする。彼女は苦痛の叫びを押し殺しながら、笑った。
「ブリュンスタッドの意味を反復しなさい。私はあの子を止められる。止めなきゃならない」
「暴力では止められない」
ヴァンは言う。「彼女は最強なのだから」
「私は血と契約の支配者。約束とは世界最上。契約とは世界最高。あの子を縛る契約だって私は出来る」
「私は君が真祖に何か施す前に殺すだろう」
「殺されるの間違いじゃなくって?」
べきん、と一際高い音が鳴り。すらりとした体躯を持った妖艶な美女が目の前にいた。
「貴方では、それが精々よ」
「知っているさ、どうしようもないほどに」
アルトルージュは進む。男達も進む。
プライミッツが真祖に突進した。一撃で弾き飛ばされるアルクェイド・ブリュンスタッド。
「プラミッツでは真祖は殺せない。彼は霊長の殺戮者なのだから」
「知ってるわ。だけど、世界最高の足止め役よ」
彼女はそこで言葉を切った。大きく息を吸い込んだ。叫ぶ。
「立ちなさい。私の騎士! 私の為に命を使い潰す最悪の悪魔供!」
白騎士の腕が伸びた。
黒騎士は、血反吐を吐きながら目線を己の主に向ける。
今にも死にそうだ。二人は同時に思った。
自分の主がそう見えたのだ。
体中の骨が粉々になっている自分よりも。
心臓を貫き続けられている自分よりも。

泣きながら叫ぶ、己の主が。

そう見えた。

だったら立たねば。
白騎士はその伸ばした腕を握り締め、地面に叩き付けた。コンクリートが粉々に砕ける。
「OK」
やってやろうじゃない。
物理的に無理だ。骨は砕けている。復元呪詛も上手く働いていない。
知ったことか。主は立てと言った。ならば立つ。

黒騎士は無言のまま、己を突き刺す魔剣に手を伸ばした。
深く己の心臓に突き刺さった剣は、ぴくりとも動かなかった。
どんな時まで男は無言だった。喋る必要など無かったから。
主への忠誠も、主への思いも。
ただ、行動で示す。そうやってきた。そうやって生きてきた。
永遠の年月を生きる、男はそうやって何時も彼女を支えてきた。
変わらない。変わる筈がない。何時だってそれだけは変わらない。
剣が僅かに動く。
そのまま、一息に引き抜かれた。
血反吐を吐きながら、思う。
さあ、立とう。

「なんて、女だ」
ヴァンは苦笑いしながら言った。
「君だけだよ、アルト。瀕死の男を声だけで蘇らせた」
「何時だって、彼等はそう生きてきたわ、そうやって生きてくれた。馬鹿な私を守る為に」
白と黒の騎士は彼女に背中を見せて立っていた。
白騎士の体はぐらぐらと揺れていて今にも倒れそうだ。
黒騎士の体は自分の血でどろどろに汚れていて、優雅とは言いがたかった。
だが、アルトは思う。
私は世界一の幸せ者だと。
体は真祖の失敗作。
それでも、私は幸せだった。
「頼みがあるわ」
「なんなりと」
何時かのように、白騎士は呟いた。
その何時かの過去であった。白騎士が彼女へと忠誠を誓った過去であった。
黒騎士は無言で通した。ただ、魔剣を握った腕が微かに動いた。
「真祖への血路を開いて」

その言葉は死ねという言葉と同意だった。
黒騎士は不死身だが、真祖の前ではニアダークすらへし折られるだろう。そうすれば死ぬ。
白騎士に至っては、不死身でも何でもない。血が体から出たせいで復元呪詛すら鈍くなっている。

それでも。

「任せなさい」
白騎士は顔を僅かに、振り返らせて笑った。
黒騎士は主には振り返らない。だが、前を向くその鉄面皮には僅かな笑みが浮かんでいた。
「―――――ありがとう」
万感の思いを込めた言葉だった。アルトは泣いていた。なんて、我侭だ。
自分に尽くしてくれる者に死ねという自分は何て汚らしいのだろう。

「真祖への道を開いてどうする」
白翼公は呟いた。
「殺されるだけだ」
「その結果は引っ繰り返してみせる。契約を結び彼女を正気に戻して見せる」
ちらり、と白翼公に目線をやるアルト。
「協力しなさい。トラフィム」
「拒否する」
断固たる声で言った。トラフィムは走り出す。
「やらねばならん」
何を、などとは聞かなかった。アルトと同じだ。
己の我侭を突き通そうとしているのは、自分だけではなかったのだ。

未だ完全に再生しきれていない、白騎士を追い越す。
黒騎士が白翼公の道を塞ごうとするが、それは横合いから飛び込んできた人形に阻まれた。
「ヴァン、貴方―――――!」
「僕はこういう気が無かった。こうする気が無かった。熱くなるのはお寒い行為だ。だけど、遠野志貴を見て思った。トラフィムを見て思った。それも“あり”だ。僕はね心情的には志貴君と君の味方だ。だけど、僕は遠い過去トラフィムと友人だった。今は知り合いだけど、過去の友誼は唯一度だけ彼の考える理想を助ける」
人形が黒騎士を吹き飛ばす。
「それが僕の選択だ」

白翼公は疾走していた。
走る度に受けた傷が広がり、血を撒き散らす。
自分の中にこれほどの血があったのかと驚くばかりだ。
体中が砕けたエンハウンスがこちらを見ていた。
笑う。
「良い戦いだった。復讐騎」
賞賛して、通り過ぎる。
プライミッツがこちらに牙を剥いた。真祖は未だ吹き飛ばされてから立ち上がっていない。
彼には勝てない。プライミッツ・マーダーを殺せるのはそれこそ真祖だけ。
或いは、遠野志貴だけ。
腕に白炎を纏わせる。効かぬ攻撃でもしないよりマシだ。

だが、その行為は無意味に終わった。
プライミッツがいきなり、吹き飛んだのだ。
見えない何かに殴りつけられたような、そんな吹き飛び方だった。
スミレか。
思わず笑う。何時だって一人では何も出来ない。弱い自分だ。
「行けぇ―――――ッ!!!」
背中に声がかかった。敵だらけの中での味方が吼えてくれた。
踏み出す。真祖の元へ。
真祖は既に立ち上がっていた。
その凶眼を光らせて、白翼公を睨みつける。
腕が飛んだ。
ぶちゅり、と音がしてねじ切られた。
構うものか。
片腕がある。そうすれば目的は果たせる。
只管に走る。飛ぶが如く。
真祖の目の前まで肉薄した。
即座に死の腕が振るわれる。
それは、白翼公の頭を叩き壊す一撃。
僅かに顔を引いた。
両の眼球が抉り飛ばされ、宙を舞った。
「ははっ………!!」
ついている。絶対についている。
ここで死ななかった。今ので死ななかった。
だったら、これからも死なない。
白翼公は吼えた。
「私を思い知れ! 真祖おおおおおおおおおおおおおッ!!!!」
その雄叫びすら、無意味とばかりに真祖の腕が再度白翼公の頭を叩き潰さんと―――――



「リタ、誇りを持ちなさい」
低い声で、老人が呟いた。
リタは困惑した。誇りとは何なのだろうか。
老人は優しく笑った。
「誇りとは意志。意志とは誇り。血の一滴までも吐き散らして、最期まで立ち続ける貴族の矜持」
そう謡って、老人は静かに目を閉じた。
「継ぐのは、ロズィーアンの姓。だが、受け取るべきなのは違います」
目を閉じたまま、朗々と呟く。
「戦いなさい自分では無い誰かの為に。何時だって無力で泣いてはいけません。何時だって後悔で叫んではいけません。友を思いなさい、師を思いなさい、恋人を思いなさい。そうすれば、体が無茶をしてでも立ち上がってくれます」
リタは首を振った。他人の為に命は張れない。自分の命は自分だけのものだ。
「その言葉は正しい。私たちが例え吸血鬼であっても私たちは永遠を生きられません。私たちは命を大切にしなければならない」
リタは同意した。そして問いかける、ならば何故誰かの為に戦わねばならないのか。
「それは、私たちが長命だからです。永遠は生きられなくとも永くは生きる存在だからです。永く生きれば、必ず見るでしょう。必ず知るでしょう。喚きながら、泣きながら、表情も声も一切漏らさずに進む者を見るでしょう。無意味だと知っていても、無意味という意味から無を取り去りたくて走る馬鹿者がいることを知るでしょう」
老人の手が震え出した。老人の瞼の奥には無数の思い出があった。
忘れえぬ誓い、人間との友誼、吸血鬼としての生き方、そして先代の死から受け継いだロズィーアンの姓。長い年月を幻視した。震える手を伸ばして瞼を覆った。涙が溢れてくる。
「リタ、ロズィーアンになるリタ。まだ、ロズィーアンでは無いリタ。君は誇りを受け継いでください。君は私の言葉を憶えていてください。そうすれば上等だ。きっと世界は私たち化物に優しくしてくれる」
老人の手が顔から落ちて、その眼差しを晒した。
ワインレッドの瞳は、リタを見ていない。リタがいる方向を見ているが、リタを見ていなかった。
「伝えたかった事は何一つ面得られませんでした。言葉の意味はちぐはぐで」
落ちた老人の手に、そっとリタが手を伸ばした。
「きっと、誰の心にも響かない。そんな有り触れた言葉だったに違いありません」
手を握る。老人は薄く微笑んだ。
「優しい君はきっと、気付いたら立っているでしょう。きっと自覚も無く。胸から突き上げる思いのままに立ち上がるでしょう。立ち上がった様は無様でも良い。誰に笑われても構わない。自分こそ胸の内で大笑いしなさい。自分の無様さと馬鹿さ加減を笑いなさい。君の助けるべきはきっともっと大馬鹿なのだから」

ぐりん、と手が持ち上がった。
音を立てて、横合いの真祖に銃口が向く。
ぎりぎり、と歯を食いしばる音がした。
夢を見ていた。見たくない夢だった。だって、終わりは何時もあの老人の死で終わるからだ。ロズィーアンの姓は継がれる。この意味はその名を持つ吸血鬼は何時か死ぬ事を意味する。当然、他殺では無い。自殺だ。
吸血行為を止める。やせ細っていく己を見ながら、後継者に戦闘技術と僅かな勇気をくれる。

そう勇気だ。それがこの世で一等上等なもの。

足が震えながら必死に体を持ち上げようと動く。拳銃を構えていない方の腕が地面を這い回り必死に体を押し上げた。
立たなくとも良い。結局はなるようになるだろう。
正義も悪も無い戦いだ。悪のふりをした正義がいる戦いだった。
誇りという名の意志が叫んだ。意志という名の誇りが叫んだ。
体が自然と立ち上がった。意識はしてなかった。
体が無茶をしてくれた。横合いから敵を殴りつける為に立ち上がってくれた。
上等。

「―――――」

何もいわなかった。口を開いたが掠れた音が漏れるだけだった。別に言いたい事も無かったのだ。死ねと殺してやると殺意すら無かった。
唯、立ち上がって。指に少しずつ力を込める。
白翼公が両の眼球を潰されながらも前に出た。苦痛の叫びではない。悲痛の叫びではない。
それは、雄叫びだった。只管に雄雄しく只管に胸を突く叫び声であった。

何時かきっと知る。
何時かきっと見る。

(ええ、見ました)

そして知った。

馬鹿な理想。崇高な理想。尊ぶべき幻想。叶う筈の無い夢想。
笑え、笑え、笑え、笑って見せろ。
大馬鹿を笑え、そうしたら―――――。

リタは深い笑みを浮かべて、指に力を込める。

銃声。

―――――そうしたら、この私が殺してやる。



スミレは見た。
リタが立ち上がって、拳銃を撃つ様を。
それが、今にも白翼公の頭を叩き粒さんとした、腕に命中したのを。
洗礼済みの銀の弾丸が、真祖の腕を逸らした。
奇跡ではない。狙ったのだ。彼女の親友はきっと狙ったのだ。
自分に力はもう無い。霊長の殺害者を吹き飛ばしたこの身は、死を待つだけなのかもしれない。
だけど、繋がった。

白翼公が走り出し。
スミレが障害を退け。
リタが危機を救い。
そして今、白翼公が叫びのままに腕を突き出している。

一連の動作に自分が加われた事を嬉しく思った。
再度、息を吸い込む。最早自分にはこれしか出来なかった。
同じ言葉を叫ぶ。
いや、これだけでいいのか?

「行けぇ―――――ッ!!!」

そうだ、きっとこれだけで。
これだけど、きっと良い。

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