十三式大回転

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zoom RSS 三人について。

<<   作成日時 : 2006/07/16 23:02   >>

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「穂村さんと寺島さんと興津さんは三人とも凄く仲が良いですね」
藤枝優理のその一言で、西海岸沿い十一番倉庫内の空気は一時的に停滞を見せた。
倉庫内にいる藤枝以外の三人はそれぞれの性格を如実に現す表情をしたが、それについては深く述べないことにする。
「いや、そんなことはねえっスよ」
何故か藤枝の前では下っ端口調になる寺島恭一が言った。美人に弱いのは総ての男のサガである。そして、恭一は乳に熱い思いを持っていた。幼馴染の貧相な胸とは違うそれに。
「付き合いが長いだけだ」
社会的上位者でなければ決して敬語を使わぬ男、興津正敏が呟いた。
「腐れ縁って奴よね」
穂村冴花が縛っていた髪の毛を解いて、結び直している。
「多分、私たちの関係って子供時代にちょっとの齟齬があれば、成立しないものだったのだろうけど。まあ、不思議とうまくやれちゃったわけで」
「別に嫌じゃなかったら離れる必要はないかなーと」
「そのままだらだら来てしまったわけだ」
三人はそういったが、お互いがお互いを大事にしていることは明白だった。この倉庫を根城にするグループの中で確固とした仲間意識を持っているのはこの三人だけだろう。
(生命共同体……というより、三人で一人といった感じですかね)
羨ましい、と藤枝は素直に思う。彼女には、そんな友人はいない。この三人は三人とも自分以外の仲間の為に命を懸ける覚悟がある。
「……馴れ初めなど聞いてもいいでしょうか?」
思考は欠片も漏らさずに、藤枝は聞いた。恭一が頷く。興津はそんな恭一を見て舌打ち。穂村は肩を竦めた。
「そう、あれは。俺がまだ幼稚だったころ」
寺島は語りだす。
「公園に妙な奴がいましてね」
「妙?」
「目付きの悪いデブが、小学校のガキ大将を泣かしていたんですよ。そのガキ大将は無駄に体がでかくてね、腕っ節も中々のもんでした。空手かなんかをやってたとか言う話で」
そのガキ大将を簡単に叩き潰したことのある『天性の喧嘩巧者』影のガキ大将だった寺島恭一はいけしゃあしゃあと言葉を吐いた。興津がその表情に微妙な苦笑を閃かせた。
「俺は義侠心溢れるいい男ですから、勝敗が決した喧嘩を止めました」
「立派ですね」
「いやあ、……当然です」
不意打ちで、背中から、実力を持って。などとは絶対に言わない恭一であった。
「まあ、相手はすぐさま喧嘩を売るような蛮族。奴の陰険なトドメ執行の儀式を邪魔した俺はそいつと喧嘩になった」
戦いは熾烈を極めた。目付きの悪いデブ――とは当然、少年時代の興津正敏のことであるが彼は実に容赦がない喧嘩の仕方をする男だった。
「首をね」
とんとん、と二本の指で首を叩いた。
「殴ってくるんですよ」
「首」
「ええ。首っつーのは力がない、それこそ女性でも全力で殴れば相手が男でもかなりのダメージを与えられる場所です。そこを、陰険なデブは狙ってきやがりました」
自分も狙ったとは、決して言わない寺島恭一である。
「戦いは数十分に及びました。――結局、決着はつかなかった。俺とそいつの決着は」
「含みのある言い方ですね」
興津と寺島はそ知らぬ顔をして枝毛を探している穂村に横目を向けた。
「乱入者がありましてね。……まあ、思えば気付くべきだったんですよ。何時の間にか人気が無くなっていることに」
殴り合っている二人に、疾風の如き蹴りが叩き込まれ地面に叩きつけられて踏み付けられること一瞬の内。
「馬鹿でかい、女だった。無駄に背ばっかが高くて肉付きが薄い女だった」
穂村の眉が僅かに揺れた。
「将来、美人になることを約束されている顔をしていたでしょ」
「ゴキブリを素手で掴める美人になるとは思わなかったが」
と、興津は笑う。穂村は興津をじろりと睨んだ。
恭一が意味もなく、鼻を掻いた。
「まー、それが女にして喧嘩無敗を誇った穂村冴花でした。俺とその陰険なデブ――興津ですが――はそれ以降、穂村に顎で使われる身分になっちまったわけです」
顎でなんか、使ってないわよ。と穂村が小さく呟いた。二人は肩を竦めて、ノーコメント。
藤枝はそんな三人を見て小さく笑った。
「親友なんですね。三人とも」

三人は同時に微妙な笑みを見せて言った。
「「「冗談」」」
奇しくも声が重なった。

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