十三式大回転

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zoom RSS 藤枝優理について。

<<   作成日時 : 2006/07/16 23:02   >>

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「藤枝優理ほど、完成されている人間は珍しい」
興津正敏は唇を歪めながら言った。西海岸沿いの十一番倉庫。今日、そこには寺島恭一と興津正敏しか存在しなかった。
恭一はぼろいソファーに横たわりながら、適当に相槌を打った。染めた金髪を掻き揚げる。
「確かに、プロポーションは完璧だな」
「そうではない。……いや、確かに体型はそうなのかもしれないが、俺がいいたいことはそんなことじゃない」
「ふん?」
恭一が、興津に視点を合わせた。
「藤枝優理という人間は個人で完結『出来る』人間だ。それ程の優秀さを持っている」
「――まあ、なんとなくわかるな」
恭一は頷いた。
「あの人は察しが良すぎる。俺たちがゲームのキャラだとしたら、あの人はプレイヤーみたいな感じだな」
「プレイヤーか」
興津は頷いた。
「そうだな。それが彼女を表すのに一番近い言葉かもしれない」
組んだ、指を興津は何かを確かめるように順番に動かした。
「藤枝は『察しが良い』。俺たちが色々なことを考えていて、それを隠そうとしても言葉に表れる僅かな情報や、その人間の目、しぐさから読み取ってしまう」
恭一は何か閃いたように、目を瞬いた。
「ああ、だからか」
「ん?」
「あの人が、鏑木庄司を気にかける訳だよ。……あいつからは何にも読み取れないだろうからな」
「読み取れたとしても、ほんの僅かな感情の揺らめきだろうな」
興津は唇を歪めた。
「テレパシストの憂鬱という奴だな。なまじ周囲の人間が何を考えているか分かるから鬱陶しくて堪らないという」
「難儀だね」
「まあそうだろうな」
興津は笑った。
「だが、忘れてはならないのは彼女が幾ら特異な存在だったとしても所詮人間ということだ。他者から読み取った情報には彼女の主観で歪められているだろうし、情報そのものが読み間違うこともあるだろう。無謬の存在など有り得ない。誰も彼も神ならぬ身だ」
恭一は興津から視線を外した。興津は構わずに話し続ける。それは恭一は絶対に興津の話を無視することなどないという確信があるからだ。興津も恭一の話は絶対に無視しない。
「だから、彼女は個人で終わっていても良かった。自分で完結していれば誰よりも幸せだった。他者など世間など詰まらないもの。そう、割り切って生きていっても良かった」
「だが、あの人はそれをしなかった」
「出来なかった」
興津は訂正した。
「彼女は完璧だ」
「彼女は天才だ」
興津は言葉を切り、二度呟いた。
「だが、心は砂糖菓子のように甘く脆い」
「それが人間だ」
恭一は何処か不機嫌な調子で呟いた。
「何もかも出来るから、何でも耐えられるから、――だからといって心まで鋼鉄である必要なないと思うがね」
「そうだな。事実、鋼鉄などではなかった。彼女は対等の友人を欲しがり、人間には必ず誰でも何処か賞賛すべき所があると信じている」

それが、良いことなのか悪いことなのか分からないが。と興津は結んだ。

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